文章

100円の傘

私にできることといえば あの人を待つことだけ そんなことを思いながら 窓の外を見る 雨はまだ降っている ああどうか あの人が戻ってくるまで降っていてください それならきっと 私のことも覚えていてくれる もし私が もっと高価だったなら そんな心配を す…

リセット

大切なことはだいたいゲームから教わった。「あー!アイテムが1つなくなってるー!」魔神英雄伝ワタル外伝というファミコンゲームの台詞だ。なんとこのゲームは、プレイ中にリセットボタンを押すとアイテムがランダムで1つ消えてしまう。安易にリセットボ…

今まで食べてきた肉

「いやぁ、『衝撃』の一言ですね。今まで食べてきた肉はなんだったのかって感じですよ」 薄笑いを浮かべ、レポーターが喋る。いい笑顔のつもりなんだろうが、不快感しか沸いてこない。 「はい、カットォーーー!」 ディレクターが大声を発し、撮影は終了した…

オンリーロンリーグローリー

ガシャン、ガシャンと無機質な鎧の音が響く。 目的地は無い。帰る場所も無い。永遠に彷徨い続けるだけの日々だ。 家族も友達もいない。俺のことを待っている奴など皆無だ。ただ、思い出なら一つだけ持っている。そう、一つだけ。「よし、じゃあそれぞれに鎧…

マジレスコメンテーター

「6時のニュースです。コメンテーターは馬路レス夫さんです」 「よろしくお願いします」 「まず、台風情報です。北九州の様子を伝えてもらいましょう。五十嵐さーん」 「はい、こちらは雨風共に強く立っていられないほどです」 「いや、あなた立ってるじゃ…

高嶺の花

高嶺に咲いたせいで 私の名前は高嶺の花 私に友達はいない ここは近寄り難い高嶺だから いつも花を広げ 皆の羨望を集めなければならない 気を抜く事を許されず 張り詰めた空気の中で息をする 稀に訪れる人達は 私を見て溜息を漏らす それに喜ぶ私はいない あ…

高嶺の花

高嶺に咲いたせいで 私の名前は高嶺の花 私に友達はいない ここは近寄り難い高嶺だから いつも花を広げ 皆の羨望を集めなければならない 気を抜く事を許されず 張り詰めた空気の中で息をする 稀に訪れる人達は 私を見て溜息を漏らす それに喜ぶ私はいない あ…

言葉のない部屋

(この話は「世にも奇妙な物語」で1992年に放送された「言葉のない部屋」を文章化したものです。問題があったら消します。) 「俺はいづもひどりぼっちだ…」 声に出したのか、心の中で思ったのかは分からない。例え声に出したとしても、返ってくる言葉がない…

同情

「それは同情?」 潤んだ目で彼女が言う。そんな質問は、きっと同情だと感じているから出てくるのだろう。ただ単に、それを否定して欲しいだけのことなのだ。しかし天邪鬼な俺は、そんな作戦にはのってやらない。 「同情だよ。当たり前じゃん」 「そっか。じ…

突然文章が書きたくなった

台風2号がやってくる。僕の家に激しい雨粒を撃ち付け、窓を鳴らす。僕はお部屋で右手にクレヨンを持ちながら、らくがき帳と格闘中だ。その時、ピンポーンとインターホンの間抜けな音。 「どちらさまですか?」 「はい。台風です」 「わあ」 どうしよう。開け…