「世界は密室でできている。」舞城王太郎

jikishi2004-06-27

これはいいです。舞城の良さが十二分に堪能できる作品でした。阿修羅ガールの時のような軽快なテンポと、予想もしないジーンと来るようなラストで後味も悪くなかったです。阿修羅のそれとは比べものになりません。きっとこれはヤンキーが善い事をすると過大評価されるのに似ていると思います。

煙になれなかった「涼ちゃん」が死んで2年。15歳になった「僕」と14歳の名探偵「ルンババ」が行く東京への修学旅行は、僕たちの「世界と密室」をめぐる冒険の始まりだった…。

でも別にこれはわざわざ奈津川シリーズに関連を持たせなくてもよかったんじゃないかなと思いました。「煙か土か〜」とかから入ったほうがいいのかなと思って、そっちを読み始めたら肌に合わなくて読まなくなっちゃうって人もいそうですしね。個人的には読んでいても読まなくても楽しめる作品だと思いました。これを読んでからそっちのシリーズも読んでみればいいと思います。
舞城はエキセントリックな文体ですが、やはりこういうテーマを持ってきたということはきっと根底にあるのは優しい気持ちなんだと思います。それとも福井という土地が密室並みに閉鎖的だったのか…。開けてはいるけれど、私達が今いるのは大きな密室なのかもしれません。


世界は密室でできている。