「UNKNOWN」古処誠二

今の風潮を考えさせられるタイムリーな本だと思いました。偶然手に取ったのだが、予想以上に心に残りました。
この先はちょっとネタバレを含むかもしれません
ミステリ小説と銘打ってますが、ミステリとして読むならちょっと物足りないかもしれません。謎解きや人物描写が薄い気がしましたし。割と薄めな本なので本格っぽくするならその点をもっと書き込んで欲しかったと思います。
でもそれ以上に自衛隊に携わる人々の悲哀が現れていてよかったです。政府は軍隊と呼ばず、国民は軍隊と呼ぶ自衛隊。彼ら自身は自分たちのことをどう思っているんでしょうか。今現在もイラクから自衛隊を撤退させろと叫んでいる人達がいますが、彼らは自衛隊の人たちの事を考えた事はあるのでしょうか。この記事を読んでみてください。まさにこの小説の中に書かれていた通りです。彼らは「税金泥棒」だの「役立たず」だの今まで言われ続けて自分の仕事に誇りを持てなかったことでしょう。今回のイラク派遣は彼らにとって自分の仕事に誇りを持てるようになるチャンスだったのではないでしょうか。それを一部の国民は「自衛隊は悪」と決め付けているのです。彼らはただ純粋にイラクの復興支援を手伝いたいだけなのに。
アメリカのやり方に問題があるのは確かです。だから日本政府も自衛隊の派遣の仕方をもうちょっと工夫するべきなのかもしれません。イラクの人達と話し合う機会も積極的に持つべきでしょう。
賛成派も反対派も敵視するだけでは問題は解決どころか暗礁に乗り上げるだけです。話を聞こうとする姿勢、理解しようとする心を持ちましょう。

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UNKNOWN講談社ノベルス