「煙か土か食い物」 舞城王太郎

まるでZAZEN BOYSの歌を聴いている様な文章。第19回メフィスト賞受賞作だそうです。純文学に慣れ親しんだ人なら思わず破り捨てたくなるような作品かもしれません。しかし、それだけでなく内容も面白いです。奇抜な文章なら誰にでも書くことが出来ますが、それだけにとどまらず読者を引き込む彼の文才は凄いと思います。
私がこの本を読んで一番うまいと思ったのは人物描写です。彼の描く人物は一癖も二癖もあるキャラばかりですが、それを裏付けるエピソードがまた面白くて読み入ってしまいます。またそこに力を入れることで読者が登場人物に愛着を持つ様に仕向けているのです。
二郎の凶暴性はこれでもかというぐらいに力を注いで描写されています。そしてこの物語にはそれは決して蛇足などではなく、むしろそれがなければ成り立たない物語でしょう。人物描写が曖昧な作品に良作はないんじゃないでしょうか。
大きな枠組みで言えば推理物なんでしょうけど、そこいらの推理物を期待して読むと失望します。しかし、これはこれで傑作です。そしてこれはシリーズ物になっているので、舞城をこれから読もうと思っている人は是非これから入ってみてください。ダメな人にはダメだと思いますが、はまれば快感です。